心配御無用で、バンコク到着。残り一泊、まる三日。
カオサン以外なら何処でも良かった。初めのカオサンで感じた気持ちが蘇るようで、怖かった。
だけど、何を言い間違ったのか、聞き間違ったのか
バスで隣になったナイちゃんが、
旅慣れていない私を心配してバスターミナルから送ってくれたのはカオサンだった。
移動するのもイヤで仕方なく最後の宿をカオサンに決める。
最後の宿泊だもの、開き直って、ちょっといいゲストハウスに。
部屋には水だけど、ちゃんとシャワーはあるし、トイレなんて水洗だ。それに、とてもキレイ。ホテルっぽい。
気をよくした所で、このウネウネ暑いおかっぱをどうにかしよう作戦。銀座と原宿が混じったようなサヤームへ向かう。
生き方を教えてくれた喪服のおばさん達は、とても優しかった。
何度も何度も、真っピンクに塗られた唇を動かしバスのナンバーを教えてくれた。
帰りのバスでも、ギャルっ子たちが乗り遅れそうになったバスを止めてくれた。
乗り換えに気づかなかった私を、バスで一緒になった女の子が案内してくれた。
カオサンに着いた時、バスの中のおじさん達みんなが一斉に「ここだ!」と叫んだ。
初めに感じたバンコクは、もうなかった。
教育されたような愛想笑いは、もうなかった。
何かを、自分に言い聞かせる必要は、もうなかった。
宿部屋、窓の下。クラブで楽しむ集団目がけて飛び降りた。みんなが、迎えてくれた。
カオサンのトゥクトゥク。ぼったくりの名台詞、真似して運転席に乗り込めば、ひっかかったフリして運転手が後に座った。
初めて逢った気がしない、二人の兄さん。
タイ語の夢。
もちろん、運が良かった。でも、それだけじゃない。
初めにみたバンコクが、もうないのと同じ。
家族の悲しい夢を、もうみないのと同じ。
初めに居た自分は、もう居なかった。
周りを変えるために、自分を変えようとするのは言い聞かせに過ぎない。
だけど、安易な言葉だけど、自分が変われば、周りも変わるのは、嘘じゃない。
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